2025年5月6日に、大阪・関西万博2025会場(夢洲)において開催された、国際シンポジウム「いのちをつなぐ水と流域地球市民フォーラム in EXPO 2025 “The EXPO 2025 Global Citizen Forum on Water and Watersheds for All Lives”」に、朴 恵淑三重大学地域イノベーション学研究科客員教授・名誉教授/WHOアジア太平洋環境保健センター(WHOACE)初代所長/三重GPN代表幹事が、司会・コーディネーターとして参加しました。本国際シンポジウムは、英語で行われました。

大阪・関西万博2025は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、世界158ヵ国の国と地域が最先端の技術などを展示する、次世代を担う若者への学びの場としても大きく期待されています。

国際シンポジウム「いのちをつなぐ水と流域地球市民フォーラム in EXPO 2025」は、2005年の愛・地球博の「自然の叡智」の実現のための市民参加をキーワードとして、名古屋(2023年)・大阪(2024年)・東京(2025年)での対話フォーラムの成果の集大成として、国際的な発信を主な目的として開催されました。特に、中部大学の「水と流域」プロジェクトを中心に、中部地域の水と流域に関する産官学民との連携による講演会、ワークショップなどが数多く開催されています。

また、中部大学と三重大学との共同研究の「流域圏SDGs評価モデルの構築に関する研究ー持続可能な流域圏のデザインに向けた指標活用の検討」において、中部大学の福井弘道副学長・古澤礼太教授、三重大学の水木千春地域イノベーション学研究科准教授・朴 恵淑地域イノベーション学研究科客員教授・名誉教授/三重GPN代表幹事・安部大樹人文学部特任助教/三重GPN事務局を中心に行われており、研究成果の一部は、書籍出版されるなど、積極的に行われています(持続可能な三重創生とSDGs経営(2021.11.), 朴 恵淑・矢野竹男編著, 風媒社)。

はじめに、朴 恵淑三重大学地域イノベーション学研究科客員教授・名誉教授/WHOアジア太平洋環境保健センター(WHOACE)初代所長/三重GPN代表幹事による開催挨拶から始まりました。「水と流域」という統一テーマのもと、名古屋、大阪、東京において、過去3年間にわたって実施された学際的な対話を通じて、持続可能な社会への道筋を探り、SDGsの実現に貢献することを目指してきた成果の集大成として、基本方針を発表すると共に、将来を見据えた対話を行うことを目的として開催されることを述べました。特に、すべての資源が循環し、自然との共生を通じて人間社会が持続的に発展する「水域文明」を確立することであり、「水域」は、経済的、社会的、文化的、政治的な単位として機能する、単一、または複数の河川水系と、それらの河川が流入する湾や水域を含む地域と定義することを述べました。「水域文明」の概念は、物質的繁栄と技術革新による都市開発を中心とした従来の近代文明とは違って、水域を基盤とする新しい文明は、人間と自然の相互多様性を基盤とした持続可能性を考えることであると強調しました。

次に、基調講演が行われ、中部大学の福井弘道副学長による「みんなのいのちの水と流域を考える地球市民フォーラムによる地域循環・エコロジー圏」の成果発表がありました。国際統合山岳開発センター(ICIMOD)所長のブータンのPema Gyamtsho博士は「ヒマラヤ地域を気候危機から守る--持続可能なアジアへの取組み」の発表において、地球温暖化によってヒマラヤ地域の万年雪が溶け、水循環の異常による水資源の枯渇の深刻化について述べました。国際環境NGOの一つの地球(One Earth)副代表のアメリカのKarl Burkart氏による「火星にも流域があるー生物学的地域主義と生物地理学についての考察」の発表が続きました。特に、生物学的地域主義は、行政区域ではなく、生態学的境界によって地域を分類する枠組であり、生物多様性の価値を可視化する新たなツールとして注目されていることが発表されました。

引き続き、パネル討論が行われ、「水と流域の未来」をテーマに、Jaehyang Soグローバル・ウォーター・パートナーシップ(GWP)技術委員会(TEC)委員長、廣木謙三政策研究大学院大学教授・水と災害に関するハイレベルパネル(HELP)コーディネーター、竹本和彦国際湖沼環境委員会(ILEC)理事長・海外環境協力センター(OECC)理事・持続可能な自治体協議会(ICLEI)日本理事長、小池俊雄東京大学名誉教授・国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHAM)センター長、Pema Gyamtsho博士、Karl Burkart氏による、水と流域の未来のあり方について白熱した討論が行われました。

続いて、次世代を担う若者による「提言文」の発表が行われました。中部大学の古澤礼太教授による、日本、インドネシア、セネガルの3名の若者の紹介が行われた後、持続可能で公平な未来のための提言文が読み上げられました。

最後に、朴 恵淑三重大学地域イノベーション学研究科客員教授・名誉教授/WHOアジア太平洋環境保健センター(WHOACE)初代所長/三重GPN代表幹事による閉会の挨拶の後、国際的に活躍するアーティストであり、メリープロジェクト創設者でもあるMitsuya Mizutani氏による「Smile Umbrella」プロジェクトの作品を背景に、国際シンポジウムの全参加者の記念撮影を行いました。

本国際シンポジウムの詳細な内容については、大阪・関西万博2025の中継リンクにおいて公開されることとなりました。